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2022年10月17日

糖質制限よりも適正糖質を(2022年10月17日)

糖尿病の方へ


〜糖質制限ではなく適正糖質を心掛けましょう〜

〜糖尿病の人はできるだけ多くタンパク質をとって血糖値を下げ、筋肉をつけましょう〜

一般的な糖尿病の分類としては1型、2型糖尿病とされています。
完全なインスリン分泌障害でインスリン注射が避けられないタイプは1型です。大多数を占めるのが2型糖尿病です。
私は自分の著者の中で2型糖尿病を以下のタイプに分けることを提唱しています。

i) クラシカル糖尿病〜慢性的な主食における糖質過剰摂取が原因で、内臓脂肪過剰を伴っているタイプ

ii) 間食型糖尿病〜主食の糖質がきちんと適量であるにもかかわらず、甘いものやジュースなどの間食により食後血糖スパイクを繰り返してるタイプ

iii) 粗食型糖尿病〜主食においてカロリーはむしろ控えているにも拘らず、ほとんどが炭水化物のみ(例えば、ざる蕎麦、そうめん、塩おむすび、おかゆだけなどで済ませてしまう)、それもこれらの食事の性質上短時間摂取(早食い)のために食後血糖スパイクを引き起こしているタイプ

i) このタイプは説明の必要はないと思います。

ii) このタイプについても更に
a) 食後のデザートタイプ
b) 3時のおやつタイプ
と分けて考えますが

a)の方が良くないのは想像に難くないですね。ただし外食などゆったりとした時間の流れで食べるデザートは一概には悪くないですが、自宅でせかせかと習慣のように一気にたべるデザートは要注意です。


〜iii)粗食型糖尿病についてが、この記事のメインテーマのひとつです。〜

別のところでも書きましたが、炭水化物中心の粗食はダメです。

a) 白米だけよりはご飯の量が同じなら牛丼の方が血糖値が下がります

b) 寿司もそうですが、恐らく鮨10貫くらいがご飯1膳くらいでしょうが、血糖値は白米単独に比べ断然下がります。当然おまかせの刺身などはブドウ糖は含まれません。食べるスピードはゆっくりとなるとなおさら食後過血糖は起こりません。ビール1本かつ日本酒2合と多めに飲んだとしてアルコールのブドウ糖換算はビール350ccで7g更に酒2合で6g。ただしワイン、シャンパン、焼酎はほぼブドウ糖は含まれません。これくらいなら糖尿病がある方でも、コントロール良好な人では血糖急上昇は起こりません。コストが心配なだけです。

c) 蕎麦やうどんなど一気に食べる食材はたまごや焼き鳥などと一緒がなおいいでしょう。

d) おにぎりもいっきぐいなので勧めませんが、明太子や肉など入りの方がより良いです。

e) ご飯におかずの際のコロッケはやめましょう。コロッケならメンチカツ。メンチカツならハンバーグだけと言った感じです。

兎に角粗食にならないように注意してしっかりタンパク質豊富なおかずを一品でも多く取って、美味しく食べて、血糖値を下げましょう。
筋肉のためにも。

beef bowl.png

牛丼摂取後の食後血糖推移 Glycative Stress Research 2016; 3 (4): 210-221より引用


〜この項では説明しませんが、粗食な炭水化物だけよりもタンパク質などを加えるとカロリーは増えても、血糖値に影響するブドウ糖換算量は低下することがわかっています。〜

糖質の取りすぎは良くないですが、制限するというマイナス思考よりも、タンパク質や脂肪もしっかり取ってしっかり血糖コントロールするというプラス思考の方がより簡単で取り入れやすいと考えます。


〜糖質制限に関しては、ストイックに減らしすぎると思わぬ弊害が生じます。〜

印象的なものだけここでは書きます。

i) 体重は確実に減ってたが生理が止まった

ii) 筋肉が落ちた

とかよく聞きます。

一つ極端な例を参考までに
さて常日頃糖質制限を厳しくしすぎている人が強度の高いレジスタンス運動をするとどうなるでしょう?私の糖尿病の患者さんで経験した例を話します。彼は常日頃極端な糖質制限を課していました。そして週一度だけあるスポーツクラブで厳しい筋肉トレーニングをしていたようです。随分久しぶりに当院を受診した患者さんは早朝に豆乳だけ飲んで、スポーツクラブでトレーニングした後でした。勿論トレーニング後は何も食べていなかったようです。さっそく当院で血糖検査をしたところ、血糖は急上昇して300mg/dl近くになっていました。当然彼は不思議に思ったのです。では何故血糖値はそんなに上がったのでしょう?答えは簡単です。運動すると交感神経が刺激されそれだけでも血糖値は上がります。しかしこのケースの場合は単にそれだけではないのです。全てが極端だったのです。糖質制限も当日のレジスタンス運動も。理屈はこうです。日常やや枯渇傾向であるブドウ糖が急遽激しいレジスタンス運動の為に必要になったのです。その為筋肉や肝臓などの臓器にあるグリコーゲンを急きょ分解して捻出したのです。なけなしの貯金を急きょ解約したのです。体にとっては非常事態ですから、なだらかな血糖上昇とはならなかったのです。彼はあまり筋肉は思ったほどつかないのは、もっと頻回に通わないからかも?と思っていたそうです。ぞっとしますよね。これは極端な一例です。


〜最後に糖質制限と私の提唱する適正糖質の決定的違い〜

糖質制限論者は、糖質の種類を分けないで論じてます。私の提唱する適正糖質は、血糖値への影響を考えてプドウ糖換算量で求めています。特にタンパク質の血糖に関する影響や、糖質でも、果糖、ガラクトースなどの糖質のことも考え合わせるとストイックな糖質制限は必要ないといえます。

もちろん糖質過剰摂取は気をつけてください。

2022年10月13日

リブレ(自動血糖測定器)の上手な利用法について(2022年10月13日)

~糖尿病治療は血糖変動を意識すべし~

理想的な糖尿病のコントロールは血糖変動の落差をできる限り縮める事が重要です。にも関わらず現実的には血糖変動の平均値を表すHbA1c値を低下させることがあたかも最終ゴールになっている傾向があります。実際の血糖値の変動を見るために一日のうち何回も採血の苦痛を経験したくないという現実の壁がありました。そこに持続的血糖変動を評価するリブレが登場してきました。


~リブレ使用目的の現状について思うこと~

現在リブレはインスリン注射やGLP-1受容体作動薬注射治療を行なっている方のみに保険適応があります。しかし糖尿病が心配な方や糖尿病と診断されているにもかかわらず、糖尿病治療の根幹である食事療法や運動療法と血糖変動との関連ついて主治医からの説明がない場合や解らない 場合には保険外でも私はリブレをオススメします。

ここでリブレについて簡単に説明します。詳しくはネットで調べるか近くの医療機関で相談して下さい。


~リブレ使用の実際~

装着は簡単で、一度装着すると2週間の血糖変動が自動モニターされます。iPhoneとうまく連動させると随時血糖値として読み取ることが出来ます。採血に伴う痛みはありません。例え保険が効かなくても高価ではありません。ネットでも自由に購入できますが、万が一の故障や不良品が心配な方は、近くの医療機関を通して購入するといいでしょう。
装着時においての日常生活への制限はありません。お風呂も入れますし、ゴルフも出来ます。ただし暑いサウナは避けた方がいいでしょう。

i)問題点

リブレで測定しているのは間質液であり、厳密に言えば血液ではありません。そのため食後の真の血糖上昇よりも15分近く遅れてリブレ値(ここでは血糖値とも表現しています)が上昇するようです。このタイムラグがある事と直接の血糖測定値と比べて正確性にやや難があるようです。もし病院にかかられてる方なら実際の血液中の血糖値やHbA1cなどを測定してもらうことによって軌道修正をして下さい。

ii)利点
どの食品を摂ると血糖値が急上昇する傾向があるかまたは食前または食後の種々の運動と血糖変動の関係をざっくりとみる為には便利です。日常動作や種々のスポーツジムさらには、水泳、ゴルフなどなどの諸動作との関係も分かります。その事は大変興味ある事です。
当然の事ながら同じ食事内容でも各人での血糖変動のピーク値はみなさん異なります。
それは各人それぞれインスリン分泌能が異なるからです。
もう少し詳しく説明しましょう。


~リブレの血糖変動とwtGL(ブドウ糖換算量)との相関の可能性について~

リブレ測定をすることで、血糖変動に影響を与えるのは摂取カロリーではなく、食事に含まれるwtGLだということが自明のこととなるでしょう。
ちょっと説明しますと炭水化物=糖質+食物繊維です。炭水化物と糖質の区別をしていない記事が散見されますが、そこは黙認しても、糖質を一括りにする事は良くありません。

糖質は最小単位として1)ブドウ糖(グルコース) 2)果糖(フルクトース) 3)ガラクトース(牛乳やプレーンヨーグルトなどの乳製品に含まれる)の3つの単糖に分けられます。中でもブドウ糖と果糖の2つが糖尿病に大いに影響します。ここでは詳しくは述べませんが、血糖値=血中ブドウ糖濃度であり、果糖濃度はではありません。果物にはその種類によって一定の割合でブドウ糖と果糖を含んでいます。果糖はブドウ糖よりもむしろ体内で中性脂肪へ変換されやすく、過剰摂取を続けると内臓脂肪をふやしてしまい、難しい言葉で言うと、インスリン抵抗性を増し、血糖値に悪影響してしまいます。ブドウ糖は直接血糖値に影響し、果糖は間接的に影響すると表現してもいいと思います。


〜炭水化物、タンパク質、脂質の代謝について〜

摂取カロリーは食後血糖値に直接影響しないのは明らかですが、いまだにカロリーの呪縛がとれていない人も多いと思いますので、少し説明を加えましょう。三大栄養素として、炭水化物、タンパク質、脂質があるのはご存知のこととして説明します。炭水化物については説明済みですが、タンパク質について説明すると、タンパク質は体内に入って各種アミノ酸となり代謝吸収されます。脂質もグリセロール、脂肪酸となり代謝吸収されます。

上記したごとく血糖値=ブドウ糖であり、アミノ酸や脂質の代謝産物を測定してるわけではありません。


〜炭水化物食品単独よりも、タンパク質や脂質を同時摂取した方が、カロリーが増えても 血糖値はさがります。〜

ブドウ糖摂取するとインスリン分泌すると言うことはほぼ皆んなの常識となっていると思いますが、アミノ酸もインスリン分泌すると言う事実への気づきがあれば、理解できるます。糖尿病の心配な方はむしろおかずを増やして下さい。ただし芋類は避けて下さい。

蘊蓄ついでに付け加えるとアミノ酸はインスリン分泌ばかりか、血糖値を上げるグルカゴン分泌作用があるとの報告はありますが、それはあくまでネズミなどにおける特殊条件下の動物実際の話であり、現実的な人においての通常食の場合はインスリンの作用がグルカゴン作用を凌駕して、結果的に血糖値低下の方向にいくようです。

具体的には
〜牛丼と白米だけの比較、寿司盛り合わせと白米だけの比較、さらには餃子と餃子の皮だけの比較など。〜


~リブレを使って運動との関連も探る~

さてリブレの話に戻りますが、患者さん自身が主治医になって実際に色んな食事の影響をリブレを利用して試すといいと思います。またレジスタンス運動や有酸素運動との血糖値の関係もリブレを使うとわかると思います。論より証拠です。今糖尿病薬の進歩はめざましいものがありますが、糖尿病治療の主役は食事の内容や運動です。

サルコペニーなど筋肉の低下を防ぐには運動、とくにレジスタンス運動が大事です。それとタンパク質が大事です。煩雑さを避けるために今回は詳細は省きますが、厳しい糖質制限を続けているといくら筋肉の材料となるタンパク質を取っても、筋肉はつきにくくなります。なぜなら、適正なブドウ糖量が筋肉内に取り込まれてこそ、タンパク質がうまく筋肉内でとりこまれるのです。大事な食事や運動を蔑ろにして、薬だけに頼っていると、できれば避けたいインスリン注射を続けることになるかも知れません。尤も1型糖尿病でない限り、例えいっときインスリン注射のお世話になっても、適正なwtGL、(ブドウ糖換算量)を守れば、インスリン注射を中断することも可能です。

色々みなさん自身でリブレを利用したり、 少し余裕のある方はネットなどを利用してwtGLを求める為に試行錯誤してください。

自宅や職場で簡単に出来る糖尿病スクリーニング検査(2022年10月13日)

病院に行かなくても糖尿病の可能性を否定したり、逆に糖尿病の可能性が高いかを自分で確かめる方法をお教えします。採血も必要ありません。

糖尿病に関する検診項目には血糖検査 HbA1c及び尿検査などがありますがこれらは空腹で検査される事が多いようです。
糖尿病本来の怖さはその血糖変動の大きな落差によるところが大です。本来はその落差を測定して糖尿病を診断するものです。その代表的検査として75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)があります。さらに妊娠糖尿病スクリーニング検査として50gブドウ糖負荷試験(50gOGTT)もあります。これらはトレランG検査とも言われます。このGは勿論glucose(グルコース=ブドウ糖)の事です。因みに形状は液体です。


〜ブドウ糖負荷試験における正常型、境界型糖尿病型、糖尿病型の特徴について〜

75gOGTTの結果
1) 正常型と判定される方の血糖変動は摂取後30〜60分くらいにピークを迎え、殆ど最高値は140mg/dlを超えていません。

2) 境界型糖尿病型の方は負荷後1時間近辺で血糖値がピークになってこの時点の血糖値は多くの例で200mg/dlを僅かに超えています。

3) 糖尿病型の方はその殆どの例で1時間で200mg/dlを大きく超えさらに血糖ピークが2時間の方へずれていっています。

50gOGTTの結果
妊娠糖尿病のスクリーニング検査として50gOGTTがあります。このデータでは負荷後1時間で140mg/dlを超えた人は確定診断のため75gOGTTへ回されるようです。
この事と正常人の日常生活における血糖変動のピークを140mg/dlまでと考えている事と何か符号しています。


〜血糖変動に影響を与えるのはカロリー量なのかブドウ糖換算量なのか〜

75gOGTT(300キロカロー含有)に対して、三大栄養素を一定の割合に含有した糖尿病テストミール検査食(450キロカロリー含有)を糖尿病専門医指導のもとに作成し、双方の比較検討をしたデータがあります。

ここから分かることは
i) 摂取後の血糖変動パターンは固形、液体にかかわらず類似しています。

ii) 300キロカロリーの75gOGTTの方が450キロカロリーのテストミール食よりも、正常型、境界型糖尿病型、糖尿病型のどのタイプにおいてもはるかに血糖変動が高く推移しています。

iii) テストミール食に含まれる炭水化物量はほぼブドウ糖換算量50g相当と計算されます。

これらの負荷試験の結果から食後血糖変動に影響するのはその摂取カロリー量でなく、摂取ブドウ糖換算量によることが分かります。


~糖尿病テストミール負荷試験食からわかること〜

1食につきブドウ糖換算量50gを摂食すると、境界型糖尿病と判断されている方の血糖変動は日常診療で見る軽症糖尿病の方の血糖変動そのものとなります。ましてや糖尿病と診断されている方においてはこの1食ブドウ糖換算量50gは過剰だと判断できます。


〜正常な方の血糖変動及び血糖値と尿糖出現との関係〜

我々の日常の食生活においては次のことが知られています。

1) 正常な方は概ね80~140mg/dlの間で血糖変動しています。

2)血糖値が大体160mg/dl以上になると尿糖が陽性となります。

この事から例外はあるにしても正常な方は食事の有無に関わらず尿糖は常に陰性です。
参考)現在ではあまり100gOGTTは行われませんが、過去のデータを見ると正常とされてる方の血糖値ピークの1時間近辺は160mg/dlくらいでした。
1食100gブドウ糖換算量こえると食後1時間後には例え正常人でも尿糖は出現するかもしれません。


〜空腹時検査では見落としてしまう血糖変動を間接的に反映した検査の提案〜

上述の75gOGTTの結果より次のことが言えます。
75gブドウ糖換算相当量の食事を摂取し1時間を経過した最初の尿検査で尿糖が陰性なら、糖尿病の心配はないと考えていいと判断しますです。何故なら一番血糖値が上昇する1時間を超えて排尿検査をしているからです。
血糖値とはその瞬間のある意味、点の検査ですが、尿検査は採尿するまでの間を反映する、線の検査と考えられます。つまり尿検査は血糖変動の流動性をある意味間接的に反映していると考えられます。


〜糖尿病の有無を自己判断する為に負荷試験を年に1〜2回実施して下さい〜

~貴方は尿糖検査テープを用意するだけ〜

当然糖尿病の診断がすでについてる方は行なわないでください。
では、実際に病院でなく自宅や職場などで具体的にどうするかお話しましょう。

1) 塩おむすび2ヶ

i)白米150gには糖質55g含まれていますが、そのうち白米のGI値75%くらいですのでブドウ糖換算量は55×0.75=41gと計算されます。
おむすび2ヶだとブドウ糖82g相当と概算されます。75gブドウ糖換算相当に減らしても構いません。これを一度に食べたあと、1時間過ぎた時点の採尿で尿糖が陰性で有れば糖尿病の心配は殆どないと考えて構いません。ここでのおむすびは、塩むすびにしておきましょう。何故ならいくらや焼き肉などの蛋白質が豊富な具材が入っていると、カロリーは増えてもブドウ糖換算量は減ってしまうからです。この理屈は別の機会に。
細かい話ついでにこの際のおしんこは普通にとっても血糖値に影響ありません。

ii)ブドウ糖換算量50gに相当するご飯の量180gくらいにした塩むすび摂取後1時間過ぎた時点の尿糖陽性は要注意です。
参考)好みによって、フランスパンや食パンなどで試したい方はそれらのGI値を調べて応用するのも良いでしょう。

2) カレーライス

i)カレーライスは516gの量でブドウ糖換算量83gとのデータがあります。カレーの香辛料自体はブドウ糖は殆どなく、カレールウとご飯でブドウ糖換算量が決まりますので、75gブドウ糖相当量なら、516×75÷83=466ざっくり460~480gのカレーを食べて1時間後に出る尿糖が陰性なら糖尿病は心配しなくていいでしょう。

ii)カレーライスのブドウ糖換算量50gは310g見当と計算されます。この程度の量で1時間後の尿糖陽性は要注意ですので精密検査を勧めます。

3) ラーメン、餃子、半ライスの場合。

i)細かな計算は省略しますが、概ね、ラーメン1杯はブドウ糖40g相当。餃子の皮は大きさによりますが1ケ分で糖質6gで、GI値が60%前後ですので餃子の皮6ヶで約22gくらいのブドウ糖換算量です。ちょっと細かくなりますが、餃子の具材のキャベツやミンチの肉を含んだ餃子自体は6個でブドウ糖換算量15gの報告があります。ここでは詳しくは書きませんが、炭水化物単独よりも他の食材を足すとカロリーが増えても血糖値に影響するブドウ糖換算量は減ります!さて餃子に半ライスを含めた合計は40+15+20=75gブドウ糖相当量となります。です。これらを食べた後同様に尿糖を検査して、陰性なら糖尿病は心配ありません。

ii)これらの組み合わせでブドウ糖換算量50g相当を摂取して、同じく食後1時間をすぎた時点の尿糖が陽性となれば医療機関へ行って下さい。


〜負荷試験とは別の、日頃おススメの尿検査のタイミング〜

上の条件はあくまでも負荷試験ですのでどちらかの検査を年1〜2回程度行うと良いでしょう。
普段使いの尿糖検査では、なんとなく食べすぎた、甘いものを食べすぎたなど、何となく気になった食事の約1時間後の尿糖検査を心がけて下さい。その時点で尿糖陰性なら大丈夫と考えて問題ありません。
尿糖排泄薬治療中もしくはコントロール不良の糖尿病の方は例外ですが、空腹における尿検査では例え糖尿病の方であっても尿糖は陰性のことが殆どです。尿糖検査は1時間後辺りがおすすめです。

GI値 関連(2022年10月13日)

〜糖尿病治療において今の薬剤治療は主役になれるか?〜

昨今の糖尿病治療薬の開発は目覚ましく、個々の状況に合わせた種々の治療選択ができるようになって来ています。治療効果判定に関して血糖変動のある意味平均値を示す指標であるHbA1cだけで行えば、薬剤治療が糖尿病治療においての主役だと考えてしまうかも知れません。しかし動脈硬化の大きなリスク要因とされている食後過血糖つまり食後血糖スパイクをなだらかにするためには、やはり食事の内容や取り方などの指導が欠かせません。
例えば、どんな糖尿病治療薬を服用していても、かつHbA1c7以下で良好コントロールだと判断されている場合でも、一度におにぎり2ヶを一気に食べてしまうと、食後過血糖は避けられません。血糖値は200mg/dlをはるかに超えるでしょう。しかし300gのステーキのみであれば、食後過血糖は生じません。食べ物の種類に関わらず、食後血糖の急激な変化をしっかりと抑える薬はまだ存在していません。あえて言えば、超速効性インスリン注射かも知れませんが、おにぎり2ヶを一気に食べないように指導をすれば低血糖のリスクを持ち合わせる超速効性のインスリン注射は要らないはずです。またインスリン注射に関して言えば、いまだに自分の体の膵臓から分泌される自己インスリンと同じ経路で代謝されるものはありません。


~食後血糖値を意識する~

食品にはそれぞれの食材に特徴的な割合で蛋白質、脂質及び炭水化物が含まれています。しかし糖尿病治療においてはどんな食品を摂取したとしても食後血糖値(血中ブドウ糖濃度)の変化で治療効果が判定されます。つまり糖尿病治療においては食品がもつカロリーではなく食品のブドウ糖換算量が問題となります。食後過血糖を抑えるにはGI値(ブドウ糖換算率)やGL値(ブドウ糖換算量)という概念の理解が必要となります。


~糖質を一括りにしないで欲しい~

因みにこれだけ知っておいて下さい。
炭水化物=糖質+食物繊維
糖質=ブドウ糖+果糖+ガラクトース
このうち血糖値に影響するのは、ブドウ糖と果糖です。
この誌面では説明を割愛しますが、直接血糖値に影響するのはブドウ糖、果糖は間接的に影響すると理解しておいて下さい。


GI値(glycemic index)について

GI値とは食品に含まれる炭水化物(または糖質)中のブドウ糖換算比率のことです。

i) 炭水化物主体食品単体のGI値
例えば、ご飯とかパンや各種麺類、果物などについて主に調べられています。
本来はこれが狭義のGI値です。ネットではこちらの情報は豊富です。原則としてその食品自体のGI値は一定です。ただし報告機関によっては幾分かの誤差はあります。

ii) 総合的GI値(料理としてのGI値)
炭水化物食品単独よりもタンパク質や脂肪主体の食品を追加摂取すると総合的GI値は同じ炭水化物量で比較すると炭水化物単独GI値よりも低下します。

   
例えば  ご飯1膳単独摂取よりも、同量のご飯1膳に魚や肉など追加すると総合的GI値は低下します。

何故なら
i)肉や魚からのインスリン分泌効果が期待できる

ii)肉や魚に含まれる脂肪や蛋白によるご飯由来のブドウ糖吸収抑制効果が期待できる

ii)魚や肉に含まれるブドウ糖量は無視できます。醤油を含む殆どの調味料も通常量ではブドウ糖量としてはほぼ無視出来ます。

調味料の糖質量としては通常量でもやや多く計算されるものはありますが、ブドウ糖換算量としてはほぼ無視できます。例外としてカレーのルーは少しだけ気にかけて下さい。

総合的GI値、つまり料理についてのGI値の報告は色んな条件が複雑に絡むので多くはありません。主治医によく説明してもらって下さい。


GI値の問題点

1)GI値を求めるときには、同量のブドウ糖との比較計算をする為に、食品によっては通常摂取量をはるかに超えて調べることがあります。

2)GI値では食品中のブドウ糖換算量は表していません。比率を表しているのです。
例えば人参はGI値が高いとされてますが、人参に占める炭水化物含有量は10数%にしかすぎないため、例えば一度に30g程度食べるのか300g食べるのかによって血糖値に与える影響はまったく異なってしまいます。30g程度食べたとして計算すると炭水化物としては3g強にしかなりません。さらにそれにブドウ糖換算量を求める為にGI値をかけるとしたら、まったく血糖値に影響しないことは明白です。


GL値(glycemic load) について

食後血糖値に影響するのは実際の食品中のGL値(ブドウ糖換算量)です。
GL値=食品1人前中の炭水化物量×GI値
または
GL値=食品100g中の炭水化物量×GI値
一般的にGL値はこのどちらかの条件下で報告されています。


GL値の問題点

1) 食品100gでの報告なのか、食品1人前なのか分かりにくい時があります

2) 食品1人前の報告でも報告機関によっての1人前が異なっていることがあります。

3) 実際に摂取する量においてのブドウ糖換算量を求めないと血糖値への影響が分かりません。


~CI値とRGI値の概念をとりいれるとwtGLが理解しやすくなる~

これから述べる、CI値、wtGL値、RGI値は私の造語ですのでネットで調べても分かりません。

i)wtGL(weightGL)値は

実際に食べる量でのブドウ糖換算量を評価をする方が現実的だと思いwtGLという指標を考えました。
註)血糖変動が引き起こされるには少なくてもブドウ糖換算量5g~10g以上は必要だと考えています。

ついでに言いますと、その根拠はここでは省略しますが糖尿病の人の治療にあたっての1食中のブドウ糖換算量は50gを超えないように指導しています。

ii)CI(carbon index)値は、
食品中の炭水化物(または糖質)の含有比率。これは食品それぞれで一定と考えられます。
例えば白米150gとすると糖質55gと報告されています。
CI値=55÷150 この比率は白米固有の比率と考えます。
CI値は食品の重さと炭水化物(または糖質)量がわかれば、
目的食品の糖質量÷食品量で分かります。

GI値は食品に含まれる炭水化物(または糖質)中のブドウ糖換算比率
GI値に関しては、ネットで多くデータを見つけられますので検索して下さい。
参)ネットでもわからない時は炭水化物食に関しては炭水化物量(または糖質量)に0.7くらいをかけるとブドウ糖量と考えておいて大きな誤りはないでしょう。


RGI(relative glycemic index)は

RGIとは食品中のブドウ含有比率を意味します。
RGI=CI×GIで求められます。。
このRGI値に実際に食する食品の重さgをかけると求める wtGL値がでてきます。
wtGL値=実際に食する食品g✖️RGI
みなさんは食品の重さを測るのみでブドウ糖換算量がわかります。

ここでは穀物の一部でRGIを求めたものを列記してみます。
ごはん  0、28 玄米  0、22 お粥  0、14 赤飯  0、31
もち    0、41 白玉粉 0、5 せんべい  0、37
ほんの一例ですが、みなさんは各RGI値に食品摂取量をかけるだけでwtGLがわかります。
誌面の都合もありここではカレーについてのみについてRGIを調べましたので書いてみます。

カレーライス 0.16 カレー自体のバリエーションを加味してもカレーライス全体で300gを超えなければ糖尿病の方でも大丈夫だと考えます。ただしインスリン治療中の方は100〜150gくらいに減らすことを勧めます。
例えば、wtGL=150×0、16=24g検討です。
恐らくカレーのまえに牛乳1杯を飲んでおくこともいいでしょう。


最後に餃子について書いてみます。
勿論大きさにもよりますが、一個の餃子の皮の糖質は6gとの報告があります。薄力粉、強力粉などから想定されるGI値は60%くらいになります。餃子6個を皮だけで計算するとwtGLは6×0.6×6=21.6です。しかしここで細かいことをいうと、餃子の皮だけならこの計算でいいのですが、餃子自体を考えてみるとキャベツや挽肉がたっぷり含まれており21.6gを大きく下回るはずです。面白いと思いませんか?餃子の皮だけより、餃子自体の方が、もちろん美味しいし、栄養もあります。
でもwtGLは低くなる!ある調べでは、餃子一皿6個としてのwtGLを15gと記載してありました。この事だけとっても糖尿病の治療には、食事の内容の知識が必要なことをお分かりいただけたでしょうか。


患者さんは自分が主治医という意識を持ってドクターとのいい人間関係を築くことをオススメします。


日常の食事中のブドウ糖換算量について(2022年10月13日)

普段よく口にする食品の血糖値への影響を考えてみましょう。


カロリーでなくブドウ糖換算量が血糖値に影響します。詳細はここでは省きますが、私は正常な方ではなく、境界型糖尿病や中等度までの糖尿病の方には1回の食事中のブドウ糖換算量50gを超えないように指導しています。また正常な方はブドウ糖換算量75gくらいまでなら大丈夫と考えています。


i) イタリアン〜パスタ、ピザについて
パスタの麺自体の量が血糖値には問題となります。パスタの味付けや種類にもよりますが、180gくらいで、ブドウ糖換算量は22〜30g前後です。たらこ、明太子、和風キノコ、ミートソース、シーフードなどは殆どブドウ糖を含んでいません。麺の量だけ気をつけて美味しく食べて下さい。むしろこれらの具材を併用すると、麺単独よりもむしろ血糖値は下がります。

ピザも生地の量だけ気にして下さい。ピザ100gでブドウ糖換算量は25g前後ですので、糖尿病の方にはおすすめです。チーズもどんどんかけて下さい。ただし蜂蜜は大さじ1杯でブドウ糖15g相当になりますので注意です。


ii) 中華〜ラーメン、餃子、チャーハンについて
ラーメンは大体ブドウ糖換算量で40g前後です。麺の量が影響し、チャーシューを加えるとむしろ血糖値は下がる傾向です。餃子は皮に小麦粉が使われており個数によっては血糖値に影響しますが、キャベツ、ミンチ肉が入ったいわゆる餃子はなら6ケでブドウ糖15g相当です。因みに皮だけなら22g前後と計算されます。チャーハンは、カロリー面ではやや同量の白米より多いですが、血糖値への影響は白米の量が同じという条件では同等かやや少なくなります。ラーメン1杯、餃子6ケ、半チャーハンなら概算で40g+15g +20g=75g検討です。この量では糖尿病の人は血糖値がかなり上がります。正常な人は許容範囲内だとおもわれます。


iii) 和食について〜トンカツ、牛丼、寿司、オムレツ、ステーキ定食について

a) トンカツで定食
トンカツ定食で血糖値に直接影響するのは、白米の量と衣です。
薄力粉、パン粉の量やそれらのGI値を考慮するとすると一人前でブドウ糖換算量23g前後です。ご飯150gとするとブドウ糖換算量41g。トンカツソースは大匙1杯で糖質4、7g検討ですが、ソースのGI値からするとブドウ糖換算1、41gと殆ど血糖値には影響しません。概ね衣とご飯が血糖値に影響します。
これだけで計算するとブドウ糖換算量は23g +41g=64ですが、キャベツのブドウ糖吸収抑制効果や豚肉自体のインスリン分泌効果を考えるとずっと低くなります。測定してないので分かりませんが64→50gくらいまでさがる可能性があります。キャベツ多めで、ご飯少なめでゆっくりなら例え糖尿病があっても中中等度でコントロールされていれていれば、これを越えなければ大丈夫だと思います。

b) 牛丼について
牛丼1杯と白米との血糖値に対する比較を且つて同志社大学大学院医科学研究所アンチエイジングセンター、酸化ストレスセンターから詳細に発表されてます。
結論は白米単独よりもご飯の量を同一にした条件下では、タレや玉ねぎの影響はさほどでないが、牛丼にすると血糖変動に関しては低くなると発表されています。矢張り牛肉からのインスリン追加分泌効果と考えられます。

c) 寿司盛り合わせについて
私が大変勉強にさせて頂いたfood-hack.comより引用致します。1人前寿司盛り合わせ390gとご飯1膳150gの食後血糖値に与える影響はほぼ同じとのデータがあります。ご飯の量は寿司の方が概算で230gに対してご飯1膳は150gでした。それぞれのブドウ糖換算量はほぼ40gと同様でした。つまり食後血糖に与える影響はほぼ同じという事です。これは牛丼の所で説明した肉の影響と同じ理屈で魚に含まれるタンパク質からのインスリン追加分泌効果で説明がつきます。

d) オムレツ1人前について〜三越伊勢丹のレシピ参考〜
卵2〜3ヶ、バター10g 塩、こしょう各少々、ケチャップ大匙3
赤ワイン大匙2とありました。ケチャップは、日本糖尿病協会の資料によると大匙1杯あたり3、9gの糖質でした。これはブドウ糖換算では大匙3杯にしても計算上たった3、4gです。しかし糖質だけの表示ですと大匙3杯は3、9×3=11、7gにもなってしまいます。同じく赤ワインに糖質があるとされますが、GI値から計算すると赤ワインのブドウ糖量は無視できます。このようにして計算するとオムレツはケチャップを考えてもブドウ糖換算量は血糖値に影響する最小ブドウ糖量の5gにもなりません。
オムライスとなるとご飯の量が問題となります。

e) ステーキ定食
たまには奮発して、ステーキ定食にしてみましょう。
もうお分かりのようにステーキやドレッシングそれにソースをかけてもほとんどブドウ糖は無視できます。和牛や輸入牛の違いはありません。問題はポテトフライとビール及びご飯です。ご飯は1膳では41gブドウ糖換算量です。ポテトフライを50gとすると糖質15g検討ですが、GI値0、64で計算すると15×0、64=9、6gブドウ糖換算量となります。この時の飲み物は個人的にはビールです。因みにアルコールはワイン、ジン、ブランデー、ウオッカ、ウイスキー、ラム、焼酎などにはブドウ糖はありません。
日本酒とビールにはブドウ糖があります。しかし日本酒2合でやっとブドウ糖換算量6gです。肝心なビールは350mlは7gのブドウ糖換算量です。ちょっと微妙な量です。奮発してステーキ定食を注文する際の参考にしてください。
正常な方はブドウ糖換算量75gくらいまで、t境界型糖尿病や中等度の糖尿病の方は50g を越えないことをオススメします。

2022年5月30日

wtGL値について

i)狭義のwtGL値
炭水化物が大半を占める食品を単品で評価する
対象)ご飯、パン、麺類、甘いおやつ、あられ、芋類、果物、飲料水

ii)広義のwtGL値
上記の狭義のwtGL値に対し、炭水化物量は同じとした場合において、たんぱく質や脂肪、食物繊維など他の要素が加わった食品や料理の場合の広義wtGL値はむしろ低くなります。

これは
・食物繊維による糖質吸収抑制効果
・たんぱく質や脂肪自体の糖質吸収抑制効果
・同時摂取のたんぱく質によるインスリン分泌作用
などが挙げられます。

wtGL値が低くなるということは血糖変動値を低下させることに繋がります。
糖尿病の人は炭水化物主体の粗食よりもカロリーも気にしないでしっかりおかずを増やすべきです。

wtGLとリブレとの関係

リブレ検査は糖尿病と診断されてるがインスリン注射はしたくないと思っている人や境界型糖尿病と言われている人にオススメです。
リブレ血糖変動も血糖値も摂取カロリーではなくwtGL(ブドウ糖換算量)摂取量に相関します。

その血糖変動のピーク値は個々で異なります。
何故ならwtGL値が同じだとしても個人のインスリン分泌反応の程度が違うからです。

リブレ血糖変動や実際の血糖変動に影響する因子
i)wtGL値
ii)自己インスリン分泌反応

食事のスピードや運動の影響に関してはここでは割愛します。

wtGL値に最初興味がなくても食後血糖値のピークがリブレ血糖値で140mg/dlを超える食品であればその食品のwtGL値について勉強して下さい。

wtGL25〜50gで評価が目安

wtGL25g相当では正常、境界型糖尿病を含め、コントロール良好な糖尿病の段階であれば、140mg/dlを超えるような血糖変動はおこりません。
wtGL50g相当で血糖ピーク値が140mg/dl以下なら、ほぼ正常です。境界型糖尿病だと160mg/dl前後以上にピークがきます。
wtGL50g相当で血糖ピーク値が200mg/dl台前半であればまだ糖尿病コントロールは中等度以下と考えられます。
200mg/dl台前半を大幅に超える方は中等度以上と思われます。
wtGL50g以上は軽度な糖尿病段階からやめておきましょう。

自己インスリン分泌反応について

個人差があります。
食事の節制や運動などによるコントロール状況によって、同じ人物でも良くも悪くもなります。
つまり同じwtGL負荷でも同一人物において血糖変動は改善も悪化もします。

註)リブレは間質液のブドウ糖濃度を測定しています。
ここでは、リブレ血糖値と記し、本来の血糖値はそのまま血糖値と書いてます。

正常な方の血糖変動は極端な食事の仕方でない限り80〜140mg/dlの範囲のことが普通です。

リブレ血糖値は血糖値よりもピークが15分程度遅れ、かつ軽度ではありますが、正確性に欠ける面はあるようです。

主治医から詳しい食事の説明もなく薬主体の治療を受けている患者さんにおすすめ

リブレ検査は主治医から詳しい食事の説明もなく薬主体の治療を受けている患者さんにおすすめします。
今リブレ検査はインスリンなどの注射薬治療している方に保険適応になっていますが、保険の適応がなくても比較的安価で、医療機関を通さなくてもAmazonあたりからでも簡単に求めることができます。
食事内容と血糖変動との関係及び運動との関係をざっくり見るには便利です。
但し実際の血糖値の変化やHbA1cまたはGA値で糖尿病のコントロールを評価する事が原則であることを忘れないことです。

2022年5月23日

ここでは2型糖尿病に限ります

現在リブレはインスリン注射やGLP-1受容体作動薬注射治療している方に保険適応がありますが、経口剤治療のみの方には保険が適応されていません。
しかし私は糖尿病治療にとって一番肝腎な食事や運動について理解してもらう目的の為に保険が効かなくてもリブレを利用すると良いと思います。
1ヶ月程度リブレを利用すると大体の傾向はわかります。
この経験はともすれば厄介なインスリン注射を避けるヒントになると考えます。

ここでリブレについて簡単におさらいします

一回の装着で2週間の血糖変動がモニターされます。
センサーを取り替えあと2週間すると約1ヶ月の観察ができます。
詳しくはネットを参照して下さい。

i)問題点
リブレで測定しているのは間質液であり、血液ではありません。
そのため食後の血糖上昇よりも15分近く遅れてリブレ値が上昇するようです。
このタイムラグがある事と直接の血糖測定値と比べて正確性にやや難があるようです。

ii)利点
どの食品を摂ると血糖値が急上昇する傾向があるかまたは食前または食後の種々の運動との関係をざっくり血糖変動の傾向をみる為には便利です。
日常動作や種々のスポーツ、ジムさらには、水泳、ゴルフなどなどの諸動作との関係も分かります。
これらの事は私を含め殆どの医師も経験しておらず、大変興味ある事だと思います。
ざっくりとした血糖変動の傾向を捉えることを目的としたリブレ使用であれば、血糖値より15分遅れるとか厳密な血糖値とは違うという点は目を瞑ることができると考えます。

インスリン注射をしている時点のリブレ測定について

インスリン注射に対する主治医の考え方

a)インスリン注射治療をずっと継続するか、
b)インスリン注射治療をなるべく早期に中止する
の二通りがあります。

私の最も敬愛する元順天堂糖尿病教授であられる河盛隆造先生は、インスリン治療が必要と判断した時には早い段階で導入されます。
そのことにより悪戯に繰り返される食後過剰血糖により引き起こされる膵疲弊を予防するのです。
そのことが膵臓からの自己インスリン分泌を正常化に近づけることにつながり、インスリン注射からの脱却につながるのです。
インスリン注射は最後の最後でやっと取り入れるというのでは膵疲弊は進んでしまいインスリン注射が生涯続いてしまう結果に繋がります。
これを先生はインスリン注射を敗戦処理投手にするなとウィットにとんだ表現で講演されています。
インスリン注射導入してしっかりと血糖変動をコントロールしていくというデリケートな状態におけるリブレ値のタイムラグや血糖値との誤差は危険だと考えておられると私は解釈しています。
この際は直接血糖値を測ってHbA1cやGAなどの指標を利用する方が断然薦められます。

糖尿病専門医の先生方の多くがインスリン治療継続をされている印象があります。
それは我々を含む開業医や患者さん自身の問題による紹介遅れの要因もあるかもしれません。
インスリン注射をしながらのリブレ使用については、私としては反対ですが、それは主治医と患者さんとの間の相互理解によるもので私が口を挟むべきではないと考えます。

インスリン注射と自己インスリンの大きな違い

最後にインスリン注射と自己インスリンの大きな違いは、皮下に注射され、吸収されたインスリンは、静脈から心臓に、そして全身臓器に流入しますので、健常人の食後に膵から分泌されたインスリンのように高濃度で肝に流入するわけではありません。
つまり未だにどのインスリン注射も生理的働きはしないのです。
その点GLP1受容体作動薬は自己インスリン分泌を促すものなのでより生理的です。
しかし食事や運動の工夫でGLP1受容体作動薬もいらない治療を個人的には目指したいと思っています。

糖尿病状態は食事や運動の注意で良くも悪くもなります。
悪くなる一方と考えないで、なるべく早い段階で主治医と相談してください。


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