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GI値 関連(2022年10月13日)

〜糖尿病治療において今の薬剤治療は主役になれるか?〜

昨今の糖尿病治療薬の開発は目覚ましく、個々の状況に合わせた種々の治療選択ができるようになって来ています。治療効果判定に関して血糖変動のある意味平均値を示す指標であるHbA1cだけで行えば、薬剤治療が糖尿病治療においての主役だと考えてしまうかも知れません。しかし動脈硬化の大きなリスク要因とされている食後過血糖つまり食後血糖スパイクをなだらかにするためには、やはり食事の内容や取り方などの指導が欠かせません。
例えば、どんな糖尿病治療薬を服用していても、かつHbA1c7以下で良好コントロールだと判断されている場合でも、一度におにぎり2ヶを一気に食べてしまうと、食後過血糖は避けられません。血糖値は200mg/dlをはるかに超えるでしょう。しかし300gのステーキのみであれば、食後過血糖は生じません。食べ物の種類に関わらず、食後血糖の急激な変化をしっかりと抑える薬はまだ存在していません。あえて言えば、超速効性インスリン注射かも知れませんが、おにぎり2ヶを一気に食べないように指導をすれば低血糖のリスクを持ち合わせる超速効性のインスリン注射は要らないはずです。またインスリン注射に関して言えば、いまだに自分の体の膵臓から分泌される自己インスリンと同じ経路で代謝されるものはありません。


~食後血糖値を意識する~

食品にはそれぞれの食材に特徴的な割合で蛋白質、脂質及び炭水化物が含まれています。しかし糖尿病治療においてはどんな食品を摂取したとしても食後血糖値(血中ブドウ糖濃度)の変化で治療効果が判定されます。つまり糖尿病治療においては食品がもつカロリーではなく食品のブドウ糖換算量が問題となります。食後過血糖を抑えるにはGI値(ブドウ糖換算率)やGL値(ブドウ糖換算量)という概念の理解が必要となります。


~糖質を一括りにしないで欲しい~

因みにこれだけ知っておいて下さい。
炭水化物=糖質+食物繊維
糖質=ブドウ糖+果糖+ガラクトース
このうち血糖値に影響するのは、ブドウ糖と果糖です。
この誌面では説明を割愛しますが、直接血糖値に影響するのはブドウ糖、果糖は間接的に影響すると理解しておいて下さい。


GI値(glycemic index)について

GI値とは食品に含まれる炭水化物(または糖質)中のブドウ糖換算比率のことです。

i) 炭水化物主体食品単体のGI値
例えば、ご飯とかパンや各種麺類、果物などについて主に調べられています。
本来はこれが狭義のGI値です。ネットではこちらの情報は豊富です。原則としてその食品自体のGI値は一定です。ただし報告機関によっては幾分かの誤差はあります。

ii) 総合的GI値(料理としてのGI値)
炭水化物食品単独よりもタンパク質や脂肪主体の食品を追加摂取すると総合的GI値は同じ炭水化物量で比較すると炭水化物単独GI値よりも低下します。

   
例えば  ご飯1膳単独摂取よりも、同量のご飯1膳に魚や肉など追加すると総合的GI値は低下します。

何故なら
i)肉や魚からのインスリン分泌効果が期待できる

ii)肉や魚に含まれる脂肪や蛋白によるご飯由来のブドウ糖吸収抑制効果が期待できる

ii)魚や肉に含まれるブドウ糖量は無視できます。醤油を含む殆どの調味料も通常量ではブドウ糖量としてはほぼ無視出来ます。

調味料の糖質量としては通常量でもやや多く計算されるものはありますが、ブドウ糖換算量としてはほぼ無視できます。例外としてカレーのルーは少しだけ気にかけて下さい。

総合的GI値、つまり料理についてのGI値の報告は色んな条件が複雑に絡むので多くはありません。主治医によく説明してもらって下さい。


GI値の問題点

1)GI値を求めるときには、同量のブドウ糖との比較計算をする為に、食品によっては通常摂取量をはるかに超えて調べることがあります。

2)GI値では食品中のブドウ糖換算量は表していません。比率を表しているのです。
例えば人参はGI値が高いとされてますが、人参に占める炭水化物含有量は10数%にしかすぎないため、例えば一度に30g程度食べるのか300g食べるのかによって血糖値に与える影響はまったく異なってしまいます。30g程度食べたとして計算すると炭水化物としては3g強にしかなりません。さらにそれにブドウ糖換算量を求める為にGI値をかけるとしたら、まったく血糖値に影響しないことは明白です。


GL値(glycemic load) について

食後血糖値に影響するのは実際の食品中のGL値(ブドウ糖換算量)です。
GL値=食品1人前中の炭水化物量×GI値
または
GL値=食品100g中の炭水化物量×GI値
一般的にGL値はこのどちらかの条件下で報告されています。


GL値の問題点

1) 食品100gでの報告なのか、食品1人前なのか分かりにくい時があります

2) 食品1人前の報告でも報告機関によっての1人前が異なっていることがあります。

3) 実際に摂取する量においてのブドウ糖換算量を求めないと血糖値への影響が分かりません。


~CI値とRGI値の概念をとりいれるとwtGLが理解しやすくなる~

これから述べる、CI値、wtGL値、RGI値は私の造語ですのでネットで調べても分かりません。

i)wtGL(weightGL)値は

実際に食べる量でのブドウ糖換算量を評価をする方が現実的だと思いwtGLという指標を考えました。
註)血糖変動が引き起こされるには少なくてもブドウ糖換算量5g~10g以上は必要だと考えています。

ついでに言いますと、その根拠はここでは省略しますが糖尿病の人の治療にあたっての1食中のブドウ糖換算量は50gを超えないように指導しています。

ii)CI(carbon index)値は、
食品中の炭水化物(または糖質)の含有比率。これは食品それぞれで一定と考えられます。
例えば白米150gとすると糖質55gと報告されています。
CI値=55÷150 この比率は白米固有の比率と考えます。
CI値は食品の重さと炭水化物(または糖質)量がわかれば、
目的食品の糖質量÷食品量で分かります。

GI値は食品に含まれる炭水化物(または糖質)中のブドウ糖換算比率
GI値に関しては、ネットで多くデータを見つけられますので検索して下さい。
参)ネットでもわからない時は炭水化物食に関しては炭水化物量(または糖質量)に0.7くらいをかけるとブドウ糖量と考えておいて大きな誤りはないでしょう。


RGI(relative glycemic index)は

RGIとは食品中のブドウ含有比率を意味します。
RGI=CI×GIで求められます。。
このRGI値に実際に食する食品の重さgをかけると求める wtGL値がでてきます。
wtGL値=実際に食する食品g✖️RGI
みなさんは食品の重さを測るのみでブドウ糖換算量がわかります。

ここでは穀物の一部でRGIを求めたものを列記してみます。
ごはん  0、28 玄米  0、22 お粥  0、14 赤飯  0、31
もち    0、41 白玉粉 0、5 せんべい  0、37
ほんの一例ですが、みなさんは各RGI値に食品摂取量をかけるだけでwtGLがわかります。
誌面の都合もありここではカレーについてのみについてRGIを調べましたので書いてみます。

カレーライス 0.16 カレー自体のバリエーションを加味してもカレーライス全体で300gを超えなければ糖尿病の方でも大丈夫だと考えます。ただしインスリン治療中の方は100〜150gくらいに減らすことを勧めます。
例えば、wtGL=150×0、16=24g検討です。
恐らくカレーのまえに牛乳1杯を飲んでおくこともいいでしょう。


最後に餃子について書いてみます。
勿論大きさにもよりますが、一個の餃子の皮の糖質は6gとの報告があります。薄力粉、強力粉などから想定されるGI値は60%くらいになります。餃子6個を皮だけで計算するとwtGLは6×0.6×6=21.6です。しかしここで細かいことをいうと、餃子の皮だけならこの計算でいいのですが、餃子自体を考えてみるとキャベツや挽肉がたっぷり含まれており21.6gを大きく下回るはずです。面白いと思いませんか?餃子の皮だけより、餃子自体の方が、もちろん美味しいし、栄養もあります。
でもwtGLは低くなる!ある調べでは、餃子一皿6個としてのwtGLを15gと記載してありました。この事だけとっても糖尿病の治療には、食事の内容の知識が必要なことをお分かりいただけたでしょうか。


患者さんは自分が主治医という意識を持ってドクターとのいい人間関係を築くことをオススメします。



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