2022年10月16日 - 2022年10月22日 « トップへ » 2023年3月26日 - 2023年4月 1日

2023年2月23日

まずは多くの医療機関で行われているアレルギー性鼻炎の一般的治療法として

i)抗アレルギー経口剤もしくはアレルギー関連経口剤。
ここで使用される薬品はその種類も多く、且つ殆どの方がアレルギー性鼻炎の治療でまず処方される薬剤の事です。

ii)点鼻薬。
鼻詰まりがひどい時や妊婦さんで経口剤や注射を避けたい時に選択。
ただし副鼻腔炎を除外診断。

a)血管収縮点鼻薬:7〜10日以内の使用にとどめること。
それ以上続けると寧ろ悪化してしまいます。
b)ステロイド入り点鼻薬:やや長丁場の花粉による鼻詰まりに使用


特殊な治療として

I)減感作療法〜体質改善の見込みはありますが、一定の通院期間を要し、かつ速効性はありません。
例年辛い思いをされる方が、シーズン前に試みる選択肢の一つ。専門医の治療を必要とします。(特に以下のiとii)

i)注射薬
アレルギー症状を起こす物質(スギ花粉など)を、低濃度から少しずつ注射することにより、患者さんの抵抗力をつけ症状を出にくくする治療法。

ii)舌下免疫療法
すぎ花粉とダニアレルギーの二つに限ります。 満5歳から治療可能

iii)ヒスタグロビン注射
ヒスタミンと免疫グロブリンを合わせた薬のこと。
特定の抗原による減感作療法では有りません。週に1回から2回受診する必要があります。これを3週間続けることで、初めて効果が期待できます。副作用は少ないようです。


II)ケナコルト筋肉注射〜因みに私はよほどでないと行いません。
これは速効性が有り安くてよく効きます。しかしこの治療には賛否両論があります。何故なら中身が「長期に持続するステロイド」ですから。ケナコルト40mg筋注で、プレドニゾロン15mgを2~3週間内服することに相当するようです。
この量はかなり大量なステロイド量といえます。
糖尿病悪化、消化性潰瘍、骨粗鬆症、血圧悪化、副腎皮質の機能低下、顔が膨れる(満月様顔貌)、月経異常、皮下出血、感染症になりやすい、など、一般的に言われているステロイドホルモンによる副作用に注意する必要があります。
ケナコルトの適応症に「アレルギー性鼻炎」とありますので、ちゃんと健康保険適応ではあります。
主治医とよく相談してください。

PS1)セレスタミンというステロイド剤と抗ヒスタミン剤の合剤がずっと以前からあります。
この薬の使用に関しても、漫然とした長期使用はケナコルト筋注に於ける副作用と同様な副作用が危惧されます。点鼻薬として使われるステロイドホルモンはその安全性はほぼ担保されていますが、経口剤や注射薬としてのステロイド剤の使用に関しては、
ことアレルギー性鼻炎の治療に関しては慎重になるべきとの意見が大半です。

PS2)あくまでも私見として。オーソドックスな治療を行い、かつ漢方薬も併用してもまだ難治性の場合。セレスタミンの改良として、プレドニンと眠気のこない第2世代の抗アレルギー剤を併用し、経口剤として短期治療をする選択肢はアリと思っています。ただし、ずっと書いているステロイドの副作用とその効果を天秤にかけ、患者さんと話し合って決める事。幸い、漢方薬もうまく併用できている為かこのような難治例にはまだ遭遇していません。ただし、私自身減感作療法や抗体注射薬の使用経験はありません。


III)生物学的製剤(抗体注射製剤)
2020年より、重症・最重症のスギ花粉症に対して、2月~5月に抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)を皮下注射する治療(保険適応)を行うことができるようになりました。
かなり高額になることと、適応に関しては専門家の知識が必要となり安易な治療では有りません。


IV)耳鼻科医の専門技術による治療
特に鼻詰まりが極端にひどい人に。
a)耳鼻科医による下鼻甲介切除術
b)レーザー治療(再発しやすい方もいるようです)


V)漢方薬治療
i)小青竜湯
アレルギー性鼻炎で1番有名な処方。薄い鼻水やくしゃみの多い方。

ii)苓甘姜味辛夏仁湯 
小青竜湯から麻黄などを取り除きアレンジしたもので心疾患を有する高齢者や胃腸の弱いひとに。

iii)麻黄附子細辛湯 
老人や冷え性で寒冷により鼻水、つまりがあるひとに。

iv)葛根湯加川芎辛夷 
小青竜湯より鼻つまりに対しては効果あり。

v)辛夷清肺湯
慢性的に続く鼻詰まりに。鼻腔の炎症で熱感を伴う傾向があり、これを冷やす目的 で、石膏(セッコウ)、知母(チモ)、黄ゴン(オウゴン)、山梔子(サンシシ)のような清熱薬(セイネツ ヤク)が含まれています。この点で、小青竜湯や葛根湯加川芎辛夷と適応病態が異なる。

vi)荊芥連翹湯
これも慢性的に続く鼻詰まりに試す価値あり。熱を冷ます生薬が多く辛夷清肺湯に似る。

アレルギー性結膜炎

各種自分にあった抗アレルギー経口薬を試し、効果不十分であれば、各種抗アレルギー点眼薬を併用し、更に効果不十分であればステロイド入り点眼薬を使う流れが一般的だと考えます。
アレルギー性結膜炎は上記の組み合わせでほとんど事足りる印象です。

それでもダメでどうしようもない時にケナコルト筋注はあり得るのかもしれませんが、緑内障へのリスクや上記のリスクを考え、本剤使用に関しては慎重に。
あえて漢方薬を併用するなら

i)清上防風湯
これは日本ではニキビ治療になっているようですが、身体上部、特に顔面の熱感、痒みを取る作用が期待される生薬が配合されてるのでトライする価値あり。

ii)越婢加朮湯
涙が多く出るような時で点眼薬を使っても効果不十分な時試す価値あり。
使用経験はありませんが、涙が多いのを浮腫と考えて、証を見ながら、五苓散、や防已黄耆湯などもありかも。

保険外ですが、
杞菊地黄丸
目に良いとされる甘菊花や枸杞子が入っているので眼精疲労などに対しても試してみたい薬剤。
花粉症の治療に関しては西洋薬の方が多くの先生にとって使いやすいことには違いありませんが、私は長年漢方薬を使ってきて、その相乗効果を認識しています。今のネット社会はすごく便利です。一方で情報は玉石混交です。蘊蓄話でなく実際的か否か見極めて下さい。そしてその実験や動物の話で終わってるのは、人でのデータがないと心得てください。

[連載]糖尿病、高血圧、健康寿命...総合内科専門医が教える「秘訣」

【第1回】 【糖尿病】「高GI食品=食べちゃダメ」とは限らない!「OK食品、NG食品」がわかる"現実的な指標" 2022/10/21

【第2回】 和食、中華、イタリアン...糖尿病でも食べてOK?血糖値を上げる食事、下げる食事【総合内科専門医が解説】 2022/10/24

【第3回】 自分の「糖尿病リスク」を調べるには?自宅や職場でできる簡単な検査(採血不要) 2022/10/27

【第4回】 【高血圧】血圧が測るたびに違うのはなぜ?医師が教える「より正確な測り方」 2022/10/29

【第5回】 【糖尿病】むしろ血糖値が上がることも...!? 「糖質制限」のワナ(総合内科専門医が解説) 2022/11/04

【第6回】 高LDLは「動脈硬化」に繋がる...。検査すべき"ハイリスクな人"とは?【総合内科専門医が解説】 2022/11/08

【第7回】 【糖尿病】血糖値に影響する?しない?「ちょっと迷う食品」の判断方法 2022/11/14

【第8回】 「食べてないのに痩せない」のはなぜ?医師が教える、本当に効果のあるダイエット 2022/11/18

【第9回】 食後すぐ「5分間だけ」やればOK!血糖値スパイクの抑制を意識した"手軽な運動"【総合内科専門医が解説】 2022/11/19

【第10回】 「無症状だから大丈夫」?働き盛りの人が「脳」や「心臓」で倒れないための"検査"【総合内科専門医が解説】 2022/11/23

【第11回】 アルツハイマー型認知症を予防するには?"まだ大丈夫な人"にこそオススメの運動 2022/12/13

【第12回】 【糖尿病】おせちを食べる前にも要チェック!各食品の「血糖値への影響度」一覧 2022/12/31

【第13回】 「そば」より「カルボナーラ」のほうが血糖値は上がらない!? 同じ「炭水化物」でもこれだけの差 2022/12/31

【第14回】 「漢方薬」と「西洋医学の薬」は何が違う?医者が選ぶ「風邪症状に効く漢方」とは 2023/01/31

【第15回】 【保険適用】アトピー性皮膚炎の治療で処方される「漢方」とは?成分・効能を解説 2023/02/07

【第16回】 【医師が解説】「ダイエット薬で痩せる」のはアリ?肥満治療に使われる「漢方薬」の成分・効能とは 2023/02/19

【第17回】 【医師が解説】病院で受けられる「花粉症の治療方法」各種 ~抗アレルギー剤から漢方薬まで。効果や副作用・注意点とは? 2023/02/26

【第18回】 【医師が解説】健康寿命を延ばすには?総合内科専門医が教える「アンチエイジング」の基本 2023/03/08

【第19回】 胸が痛いのに、検査しても「異常なし」...日本人特有の「原因不明の胸痛」の正体【医師が解説】 2023/04/07

【第20回】 要介護の一因・サルコペニアを予防!「1日1万歩ウォーキング」より効果的な「1日5分程度」の運動【医師がアドバイス】 2023/06/26

【第21回】 「高カロリーの割に太らないもの、低カロリーでも実は太るもの」の決定的差【医師が解説】 2023/07/31

【第22回】 【医師がアドバイス】通院生活は嫌、薬は飲みたくない...⇒それなら、75歳以上になったら"これだけ"はやってほしい 2023/08/05

幻冬舎ゴールドオンラインに記事掲載開始

[連載]糖尿病、高血圧、健康寿命...総合内科専門医が教える「秘訣」
幻冬舎ゴールドオンライン


2022年10月16日 - 2022年10月22日 « トップへ » 2023年3月26日 - 2023年4月 1日