2021年10月 « トップへ » 2022年10月

2022年5月30日

wtGL値について

i)狭義のwtGL値
炭水化物が大半を占める食品を単品で評価する
対象)ご飯、パン、麺類、甘いおやつ、あられ、芋類、果物、飲料水

ii)広義のwtGL値
上記の狭義のwtGL値に対し、炭水化物量は同じとした場合において、たんぱく質や脂肪、食物繊維など他の要素が加わった食品や料理の場合の広義wtGL値はむしろ低くなります。

これは
・食物繊維による糖質吸収抑制効果
・たんぱく質や脂肪自体の糖質吸収抑制効果
・同時摂取のたんぱく質によるインスリン分泌作用
などが挙げられます。

wtGL値が低くなるということは血糖変動値を低下させることに繋がります。
糖尿病の人は炭水化物主体の粗食よりもカロリーも気にしないでしっかりおかずを増やすべきです。

wtGLとリブレとの関係

リブレ検査は糖尿病と診断されてるがインスリン注射はしたくないと思っている人や境界型糖尿病と言われている人にオススメです。
リブレ血糖変動も血糖値も摂取カロリーではなくwtGL(ブドウ糖換算量)摂取量に相関します。

その血糖変動のピーク値は個々で異なります。
何故ならwtGL値が同じだとしても個人のインスリン分泌反応の程度が違うからです。

リブレ血糖変動や実際の血糖変動に影響する因子
i)wtGL値
ii)自己インスリン分泌反応

食事のスピードや運動の影響に関してはここでは割愛します。

wtGL値に最初興味がなくても食後血糖値のピークがリブレ血糖値で140mg/dlを超える食品であればその食品のwtGL値について勉強して下さい。

wtGL25〜50gで評価が目安

wtGL25g相当では正常、境界型糖尿病を含め、コントロール良好な糖尿病の段階であれば、140mg/dlを超えるような血糖変動はおこりません。
wtGL50g相当で血糖ピーク値が140mg/dl以下なら、ほぼ正常です。境界型糖尿病だと160mg/dl前後以上にピークがきます。
wtGL50g相当で血糖ピーク値が200mg/dl台前半であればまだ糖尿病コントロールは中等度以下と考えられます。
200mg/dl台前半を大幅に超える方は中等度以上と思われます。
wtGL50g以上は軽度な糖尿病段階からやめておきましょう。

自己インスリン分泌反応について

個人差があります。
食事の節制や運動などによるコントロール状況によって、同じ人物でも良くも悪くもなります。
つまり同じwtGL負荷でも同一人物において血糖変動は改善も悪化もします。

註)リブレは間質液のブドウ糖濃度を測定しています。
ここでは、リブレ血糖値と記し、本来の血糖値はそのまま血糖値と書いてます。

正常な方の血糖変動は極端な食事の仕方でない限り80〜140mg/dlの範囲のことが普通です。

リブレ血糖値は血糖値よりもピークが15分程度遅れ、かつ軽度ではありますが、正確性に欠ける面はあるようです。

主治医から詳しい食事の説明もなく薬主体の治療を受けている患者さんにおすすめ

リブレ検査は主治医から詳しい食事の説明もなく薬主体の治療を受けている患者さんにおすすめします。
今リブレ検査はインスリンなどの注射薬治療している方に保険適応になっていますが、保険の適応がなくても比較的安価で、医療機関を通さなくてもAmazonあたりからでも簡単に求めることができます。
食事内容と血糖変動との関係及び運動との関係をざっくり見るには便利です。
但し実際の血糖値の変化やHbA1cまたはGA値で糖尿病のコントロールを評価する事が原則であることを忘れないことです。

2022年5月23日

ここでは2型糖尿病に限ります

現在リブレはインスリン注射やGLP-1受容体作動薬注射治療している方に保険適応がありますが、経口剤治療のみの方には保険が適応されていません。
しかし私は糖尿病治療にとって一番肝腎な食事や運動について理解してもらう目的の為に保険が効かなくてもリブレを利用すると良いと思います。
1ヶ月程度リブレを利用すると大体の傾向はわかります。
この経験はともすれば厄介なインスリン注射を避けるヒントになると考えます。

ここでリブレについて簡単におさらいします

一回の装着で2週間の血糖変動がモニターされます。
センサーを取り替えあと2週間すると約1ヶ月の観察ができます。
詳しくはネットを参照して下さい。

i)問題点
リブレで測定しているのは間質液であり、血液ではありません。
そのため食後の血糖上昇よりも15分近く遅れてリブレ値が上昇するようです。
このタイムラグがある事と直接の血糖測定値と比べて正確性にやや難があるようです。

ii)利点
どの食品を摂ると血糖値が急上昇する傾向があるかまたは食前または食後の種々の運動との関係をざっくり血糖変動の傾向をみる為には便利です。
日常動作や種々のスポーツ、ジムさらには、水泳、ゴルフなどなどの諸動作との関係も分かります。
これらの事は私を含め殆どの医師も経験しておらず、大変興味ある事だと思います。
ざっくりとした血糖変動の傾向を捉えることを目的としたリブレ使用であれば、血糖値より15分遅れるとか厳密な血糖値とは違うという点は目を瞑ることができると考えます。

インスリン注射をしている時点のリブレ測定について

インスリン注射に対する主治医の考え方

a)インスリン注射治療をずっと継続するか、
b)インスリン注射治療をなるべく早期に中止する
の二通りがあります。

私の最も敬愛する元順天堂糖尿病教授であられる河盛隆造先生は、インスリン治療が必要と判断した時には早い段階で導入されます。
そのことにより悪戯に繰り返される食後過剰血糖により引き起こされる膵疲弊を予防するのです。
そのことが膵臓からの自己インスリン分泌を正常化に近づけることにつながり、インスリン注射からの脱却につながるのです。
インスリン注射は最後の最後でやっと取り入れるというのでは膵疲弊は進んでしまいインスリン注射が生涯続いてしまう結果に繋がります。
これを先生はインスリン注射を敗戦処理投手にするなとウィットにとんだ表現で講演されています。
インスリン注射導入してしっかりと血糖変動をコントロールしていくというデリケートな状態におけるリブレ値のタイムラグや血糖値との誤差は危険だと考えておられると私は解釈しています。
この際は直接血糖値を測ってHbA1cやGAなどの指標を利用する方が断然薦められます。

糖尿病専門医の先生方の多くがインスリン治療継続をされている印象があります。
それは我々を含む開業医や患者さん自身の問題による紹介遅れの要因もあるかもしれません。
インスリン注射をしながらのリブレ使用については、私としては反対ですが、それは主治医と患者さんとの間の相互理解によるもので私が口を挟むべきではないと考えます。

インスリン注射と自己インスリンの大きな違い

最後にインスリン注射と自己インスリンの大きな違いは、皮下に注射され、吸収されたインスリンは、静脈から心臓に、そして全身臓器に流入しますので、健常人の食後に膵から分泌されたインスリンのように高濃度で肝に流入するわけではありません。
つまり未だにどのインスリン注射も生理的働きはしないのです。
その点GLP1受容体作動薬は自己インスリン分泌を促すものなのでより生理的です。
しかし食事や運動の工夫でGLP1受容体作動薬もいらない治療を個人的には目指したいと思っています。

糖尿病状態は食事や運動の注意で良くも悪くもなります。
悪くなる一方と考えないで、なるべく早い段階で主治医と相談してください。


2021年10月 « トップへ » 2022年10月