2019年4月30日 « トップへ

2019年5月18日

糖尿病を克服する

糖尿病は一度発症すると正常化する事なく徐々に進行しながら生涯に渡り投薬治療が欠かせないと考えている方が殆どだと思います。

トロントの医師であるDR.JASON FUNG氏の書物を拝読して共感し、かつ思いを新たにしたことがあります。2型糖尿病の人は食事がきちんとできれば、という条件下ですが必ず良くなります。

糖尿病は食事の内容により影響される病気です。当然同じ人でも血糖変動のパターンは毎日違います。糖尿病治療の主役は食事指導であり、投薬治療はあくまでも脇役です。

食事の内容といっても決して難しく考える事はありません

炭水化物、蛋白質、脂質の三大栄養素のうちで血糖変動に直接影響を与えるのは炭水化物であるという事を知っておくことで十分です。蛋白質や脂肪からの糖新生は生じることがあってもあまり大きな影響はありません。

「炭水化物」=「糖質」+「食物繊維」です。

註)糖質と炭水化物を同義語的に使っている表現も多いので注意して下さい。


糖質や食物繊維といっても色々あります。
しかし典型的には75gブドウ糖負荷試験で糖尿病の確定診断を行うことからもお判りのように、血糖値に大きな影響を与える糖質はブドウ糖です。

その為に、実際に食べる食品中の炭水化物量をブドウ糖換算量g(wtGL値)へ置き換えてみる習慣をつけておくと食後の血糖変動がイメージしやすくなると考ます。

wtGLg=食品中の炭水化物量g×食品のGI値%


GI値とは食品中の炭水化物が血糖値に与える影響を同じ量のブドウ糖と比較して表した指標の事です。GI値については多くのネットで簡単に調べられます。ただし報告者によってGI値が多少異なりますが、大きな違いではないようです。

GL値に関しては目的食品1人前を基準に計算する報告と食品100gを基準にして計算する報告があります。私は実際に食べる食品中の炭水化物量からGI値を参考にして計算することがより実用的と考えてwtGL値という言葉を使っています。
wtGL値というのは私の造語です。

wtGL値については私のHPにも一部記載しておりますが、GLUTEN FREEのLOW CAR lifeのデータを参考にさせていただいております。


注意
果糖はwtGL値では過小評価されてしまいますが、過剰摂取が続くと後日糖尿病コントロールの悪化要因になりますので要注意です。

まずは基本的な3食について説明します

主に穀類、小麦粉製品、パン及び芋類などのwtGL値に注意する習慣を身につけて下さい。

蛋白質や脂肪を多く含む食品、例えば卵、卵製品、大豆製品、肉や魚介などについては通常量であればwtGL値は無視して構いません。あまり血糖値に大きな影響が無いからです。むしろ、蛋白質や脂肪などを多く含んだ食品をwtGL値が問題となる穀物やパンなどの炭水化物が豊富な食品と同時に摂取するとカロリーとしては増えますが穀類やパンなどの単独摂取よりも食後血糖値は下がるようです。
このことは食物繊維や酢などを穀類やパンなどと同時摂取する時にも明らかなようです。
すなわち血糖低下作用があります。


一つ例を挙げてみましょう。

お寿司とおにぎりの比較について(ただしご飯の量が同じであるという条件下では)


a) 魚のwtGL値は気にしなくていい点

b) 炭水化物(ここではご飯)に蛋白質を多く含む物(ここでは寿司ネタ)が加わることにより炭水化物の吸収を少し抑えてくれる

c) 寿司の方が栄養価が高くなる

d) 酢による食後血糖値の抑制効果

e) 寿司はゆっくり食べるがおにぎりは一気に食べてしまいがちとなる


などの点よりお金に余裕のある時にはお寿司の方がオススメです。

主食の場合、各1食分の合計をwtGL50以下またはwtGL25以下を提案します

3食のうちの1食中の穀類やパン、イモ類などの合計のwtGL値を50g以内に止めるようにして下さい。炭水化物含有の多いお菓子や飲料水、さらには調味料などを食事時に摂取する際はこれらのwtGLももちろん加味します。

もしインスリン注射治療中の場合はできる限り早期にインスリン治療を中止および減量するため1食中の合計wtGL値を25g以内にとどめることを勧めています。

長年インスリン注射していた方でも食事内容を改善することで中止できる例を経験しています。


注意
砂糖使用時はその量についても気にかけて下さい。

副食やおやつなどについて

間食としては炭水化物量20g以下もしくはインスリン治療中の方は取らないこと。

自分が好んで摂取するおやつ類や飲料水などに関しては、それらのカロリーは無視して構いませんが、炭水化物含有量を気にかけるようにして下さい。その為には食品カロリーブックを一冊は必ず手元において下さい。


参考)甘味料やアイスクリーム、飴などの多くのおやつに含まれる炭水化物量=wtGL
としておくとGI値やwtGL値について迷わなくていいと思います。

果物、砂糖、甘味料、大豆以外の豆類、菓子類、飲料水、調味料、油脂類、乳製品、種実について

糖質の中でもブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の二つが糖尿病を考える上で重要です。ガラクトースもありますが現実的には乳製品中に含まれており、あまり血糖変動に影響しないと考えていいと思います。

ブドウ糖と果糖の大きな違い
砂糖はブドウ糖と果糖の両方からできてます。

ブドウ糖は血糖そのものであるため分かりやすいのですが、果糖はブドウ糖と異なり、直接血糖をあげる効果はさほどありません。その為に短期間で見ると糖尿病には影響がないと勘違いされてしまいます。しかし果糖は量によっては中性脂肪をふやしてしまい、肥満や脂肪肝の原因になりやすく、果物や野菜ジュースなどの過剰摂取が長期化するとインスリン抵抗性が進みインスリン分泌機能障害を生じる可能性が出てきます。そのために糖尿病のコントロール悪化につながることもあります。

殆どの乳製品は通常量であれば、wtGLを気にすることはありません。ただし、ヨーグルトの中には糖質が多いものもありますので注意してください。糖尿病コントロールの悪化が生じた場合には、HbA1cの検査自体の約2ヶ月の評価のずれ、更には果糖に代表されるwtGL値では見過ごされてしまう食品についての考察が欠かせないと思います。糖尿病は食事が主因の病気であることの基本を忘れず、安易に投薬の増量に走らない態度がわれわれ医師には望まれます。

勿論、この場合果糖を控え続けることができれば、もとにも戻ります。糖尿病の状態は流動的です。良くするも悪くするも本人の食事の仕方次第です。


註)果物ジュースの過剰摂取や果糖ブドウ糖液糖、さらには砂糖についてDR.JASON FUNG氏は特に肥満や脂肪肝からのインスリン抵抗性に及ぼす影響を懸念しています。

食生活の落とし穴として

主食としての3食は気をつけていても、炭水化物含有量の多い菓子類、飲み物などを不用意に多く摂取しているケースも多いようです。

おやつなどに関してはアーモンドやナッツ類はオススメです。さきいかやホタテのひもなど蛋白質が多いものも悪くありません。

飲料水は、水、ウーロン茶、麦茶、コーヒー(ただし自動販売機のものやインスタントはダメです)お茶以外は飲まないことです。

はちみつ、ジャム、メープルシロップなどの甘味料、砂糖、などに含まれる炭水化物はほとんどが糖質(果糖やブドウ糖)でありより注意が必要です。

実際、糖尿病患者さんの治療経験からは、3食は注意しているにも拘らずこれらの食品に対する認識の甘さで糖尿病が悪化することが多々あると感じています。

調味料について

醤油、ソース、固形コンソメ、トマトケチャップ、カレールウには意外と炭水化物が含まれています。

酢は血糖に対しては大丈夫です。

油脂類について

原則として血糖値に影響しません。牛脂、ラード、バターなどの飽和脂肪酸は大丈夫です。
オリーブ油は抗炎症作用のあるオメガ3が豊富でオススメです。さらにパンなどと一緒に摂取すると血糖値を下げる効果があるとも報告されています。

しかし多くの植物油は炎症作用のあるオメガ6が多いので勧められません。

種実について

アーモンド、クルミ、ピスタチオ、ナッツ類などは炭水化物含有量が少なく且つ質の良い不飽和脂肪酸や食物繊維も豊富なため、血糖値抑制効果も期待されます。単独のおやつとしても適切です。

ただし、栗、蓮の実、銀杏は炭水化物が多いので注意してください。

きのこ海藻、野菜について

椎茸、焼き海苔 ワカメ、ヒジキなどは多くの野菜と同様に、炭水化物含有率は高いですが、食物繊維が豊富ですのでしっかりとってもいいでしょう。

佃煮は炭水化物含有量がやや気になります。でも量を食べなければ大丈夫でしょう。

糖尿病だからといって食べられないものはほとんどありません

糖尿病治療に際しては蛋白質や脂肪に関してはあまり制限しません。つまり糖尿病だからといって食べられないものはほとんどありません。糖尿病の食事指導においてカロリーありきで説明している医療機関はこれからの時代に取り残されていくと思います。

例えば、飽和脂肪酸の多い脂肪で太ったり、糖尿病を悪化させるということは無いようです。動物性脂肪がむしろ脳卒中を減らすというデータすらあるようです。

ひとくちに糖尿病と言っても、それぞれ程度の差があり、食生活もさまざまです。自分に合った食事内容、特に炭水化物製品の摂取に注意することが出来れば、1型糖尿病でない限りは糖尿病の克服はさほど難しくないはずです。

お勧めの本

DR. JASON FUNG氏の「太らない体」「THE DIABETES CODE」の2冊を購読されることを勧めます。

彼曰く、マウスが痩せても人間は痩せない。私は人間で実証されたことしか参考にしないし、質の高い、論文審査のある雑誌に掲載されたもの以外はほとんど参考にしない。

そして彼の上記の本には数百に及ぶ参考文献の引用がされています。

彼はこうも言ってます
1)type2 diabetes is largely a dietary disease. 食事が主な原因です。

2)type2 diabetes is a reversible disease. 頑張れば必ず良くなります。

3)the dose makes the poison. 甘い物や炭水化物自体よりもその量が問題です。


ただし私は糖質制限論者ではなく、適正糖質を支持しています。



2019年4月30日 « トップへ