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2019年4月29日

糖尿病治療のエッセンス

糖尿病ではない正常人でも血糖値は空腹と食後において80mg/dl~140mg/dlの範囲で時々刻々と推移しています。正常人では食後血糖のピークは30分あたりから1時間以内が殆どです。

自己インスリン(自分の膵臓β細胞から分泌されるインスリン)がきちんと正常に分泌されていれば糖尿病にはなりません。

食後過血糖とは食後約1時間後に生じる140mg/d1lを大幅に超える血糖変動を指しています

自己インスリン分泌能はまだ糖尿病の診断基準を満たさない段階の食後過血糖を繰り返す境界型糖尿病状態から既に低下し始めると言われています。

一方でたとえ糖尿病と診断されていても食後過血糖をコントロールし続けることにより自己インスリン分泌能が改善していくことも分かっています。

つまり食後約1時間後に生じる食後過血糖をしっかりとコントロールし続け、内因性インスリン分泌能を改善させる事が糖尿病治療の根幹になります。

食後過血糖を抑えるためには

1)一度に摂取する炭水化物量を控える
2)炭水化物を多く含む食品摂取にかける時間を出来る限り長くする
3)炭水化物単独よりも食物繊維はもとより蛋白質や脂肪を同時摂取する
4)食後直ぐの簡易レジスタンス運動を習慣ずける。
5)炭水化物量が多いおやつや飲料水の過剰摂取や常に何かを飲み食いする習慣を断つ。
6)糖尿病薬の利用
上記の組み合わせで自分にあった無理のない選択が望まれます。


註)食べようとする食品中の炭水化物量をブドウ糖換算量g(wtGL値)へ置き換えてみる習慣をつけておくことを勧めます。
wtGLg=食品中の炭水化物量g×食品のGI値%
GI値とは食品中の炭水化物が血糖値に与える影響を同じ量のブドウ糖と比較して表した指標の事です。GL値よりもその情報は多くネットで簡単に調べられます。


註)
炭水化物の中の果物に関して。
果物はGI値ひいてはGL値があまり高くないので、食後過血糖は生じにくいと考えられます。しかし摂り過ぎると肥満や脂肪肝に繋がっていきます。やがてインスリン抵抗性を生じ、適切な自己インスリン分泌能に支障を来してしまう危険性があります。

無症状の方が脳と心臓で倒れないための2大お勧め検査

1)頭部精密MRIおよびMRA検査

2)冠動脈CTまたは冠動脈MRI検査(coronary CTまたはcoronary MRI検査)


1)頭部精密MRIおよびMRA検査

頭部MRI検査と言っても種々の撮影条件や機械の精度によってさらに言えば読影者の力量によっても異なります。
頭部病変の細かな病変を見落とさないための撮影条件としては通常のT1強調、T2強調条件だけでは不十分で、T2スター、DWI法。FLAIR法など更には脳血管を評価するMRAの撮影条件も必要です。
頭部精密MRIの主な目的→早期の脳小血管病変を見逃さないことです。


脳小血管病変には
1)無症候性ラクナ脳梗塞
2)CBMs(脳微小出血)
3)白質病変(脳における虚血性変化)
などが挙げられます。

自覚症状が全くない時点でもこれらの所見が認められた場合には将来的な脳梗塞や脳出血のリスクのみならず、認知症のリスクでもあると言われており大変重要な所見です。かつ決してめずらしい所見ではありません。


参考)
頭部精密MRIおよびMRA検査でわかる病変として
1) 脳小血管病変
2) 脳動脈瘤
3) 脳血管狭窄
4) 脳動静脈奇形
5) モヤモヤ病
6) 脳腫瘍
などが無症状の方に見つかる可能性があります。2)〜6)は侵襲的処置が必要になります。

2)冠動脈CT又は冠動脈MRI検査

a)冠動脈CT又はMRI検査で異常がない場合
 更なる冠動脈カテーテル検査は殆ど必要がありません。


b)冠動脈CT又はMRI検査で異常なしの判定が困難な場合
 更なる冠動脈カテーテル検査の必要性を検討します。

【冠動脈CTまたはMRI後の経過観察チャート】

 冠動脈CT/MRI→異常なし→このまま経過観察
   ↓
 異常の疑い有り→心臓シンチ→異常なし(ひとまず安心)→経過観察
   ↓      心臓シンチ→虚血性変化あり→冠動脈カテーテル検査
 冠動脈カテーテル検査→異常なし→経過観察
 冠動脈カテーテル検査→狭窄あり→PCIや冠動脈手術              


冠動脈CT検査の被爆について
Dual energy CT, 逐次近似法など、撮像方法や画像処理の工夫により、被曝線量を低減しつつも良好な画像を得る試みが行われています。使用するCT scanner、撮像プロトコールによって被曝線量は大きく異なります。冠動脈MRI検査については、被曝しないという点は大きな魅力です。しかし機械の精度(例えば3テスラ以上)や撮影条件が厳しく検査する施設をCTよりも厳密に選ぶ必要があります。

参)腎機能が悪く造影剤使用を躊躇する場合は冠動脈石灰化スコアも有用です。


頭部MRIおよびMRA検査または冠動脈CTまたはMRI検査で異常が見られた時の対応について

1)脳小血管病変が見られた時
中でもCBMsが認められたら先ず血圧をしっかり治療する必要があります。
130mmHg以下を目標にします。CBMsが認められれば→先ずはきちんと降圧する必要があります。無症候性ラクナ梗塞又は白質病変→血圧のみならず、脂質、血糖管理、更には適正な運動や食事の管理、禁煙なども含め総合的な危険因子の管理を行う必要があります


2)冠動脈カテーテルで狭窄が判明した方でステント挿入などの処置(インターベンション)や冠動脈手術をされた方へ

これらの手技は大変重要な治療ですが、あくまでも対症的な処置であり根本治療ではない事を忘れてはいけません。インターベンション又は冠動脈手術後→再発予防を兼ね術前よりもさらに種々の厳しい管理が欠かせません。きちんとした運動や食事の管理、脂質異常、血圧管理、タバコなどリスクファクターの管理が必要です。今の医療現場を考えた時に縦割の色が濃いようです。緊急な治療は縦割り医療でいいと思います。しかし一次予防や再発予防に関しては総合内科医の横断的治療が必要だと考えます。


註)検査対象者として
1) 高血圧
2) 脂質異常
3) 糖尿病
4) 慢性腎臓病(CKD)
5) 喫煙者
6) アルコール過剰摂取(エタノール換算50g/日以上)
7) 家族に,脳梗塞や出血の既往もしくは虚血性心疾患の既往のある人などの複数リスクのある方にお勧めします。


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