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結語

総カロリーについて
糖負荷試験のデータから明らかなように血糖変動に影響するのは、炭水化物の質と量であり、たんぱく質や脂質を加えて総カロリーを増やしてもほとんど血糖変動には影響はありません。

炭水化物摂取量について
糖尿病の方においては食事もしくは食品中の総合wtGL値(ブドウ糖換算量)を把握しておくと食後血糖変動がイメージしやすいと考え換算表を作成しました。
その際にwtGL25gや50g相当を把握しておくと便利だと考えます。

75g炭水化物含有テストミール食から言える事
GI値を加味するとテストミール食中の75g炭水化物はwtGL60g(ブドウ糖約60g相当)と計算されます。
一方75gブドウ糖負荷試験の血糖変動について詳しく観察してみると、種々の実臨床のデータ解析から想定される理想的な糖尿病コントロールを得るにはこの75gは多過ぎると判断しています。
依って軽症~中等度までの糖尿病の方の各一食分の炭水化物の総量はwtGL50~60g以下が理想的だと個人的には考えています。

投薬を増やすか食事中の炭水化物量をコントロールするかどうかは患者さんが主治医のごとく自己責任において決定すれば良いと考えます。

特に主治医からインスリン注射を勧められている方や、既にインスリン注射治療を行っている方は炭水化物摂取量を意識する事でインスリン注射を回避、減量または中止することも大いに可能です。

自己尿糖測定は一部の制約はありますが、患者さん自らが主体となって血糖コントロールの判断をすることの一助となると思います。しかし注意しないといけない点は、尿糖からは低血糖の判断はできません。その為、低血糖をおこしうる得る投薬の有無を知っておくことも必要です。

たんぱく質摂取量について
たんぱく質を十分にとることは、今、話題となっているサルコペニア(筋肉減少)の予防にも大事なことです。たんぱく質摂取では急峻な血糖変動はほとんどおこしません。
註)サルコ(筋肉)ペニア(減少)が語源となっています。

早期からの血糖コントロール

境界型糖尿病の段階から動脈硬化が生じるといわれていることもあり、糖尿病の早期からしっかりコントロールすることが望まれます。

HbA1cの質を考えること

HbA1cについてはその値だけでなく質も大事である事がわかっています。
その為には急峻な血糖変動を避ける努力が大事だと考えます。
そのためには一度にとる炭水化物摂取量もそうですが、ゆっくり食事に時間をかけることも大事な要素です。昔から言われている、よく噛んで食べること、という格言を思い出してください。
摂りやすい炭水化物だけでなく毎食必ずたんぱく質を取ることで食事の時間ももっとかけられ、且つ筋肉の維持にも役立つ事を覚えておいて下さい。

認知症がなくかつ自立生活がおくれる方について

低血糖を引き起こす可能性のあるとされている薬剤を使ってない条件下であれば、年齢に関係なくHbA1c7.0以下を目指し、更に限りなく正常から境界型糖尿病に 近い血糖コントロールを目指します。

若い人であればあるだけ尚更のことです。

ただし低血糖を引き起こす可能性のある薬剤を使わざるを得ない症例では、 HbA1c7.0以下は目指しません。

痴呆症のある方や自立生活ができない方について

HbA1c8.0あたりなら良好なコントロールだと考えます。
インスリンやSU剤は原則として使いません。
もし使うとしてもそれらは極力少量にとどめHbA1c8.5くらいでも仕方ないと考えています。

運動

有酸素運動やレジスタンス運動を適宜組み合わせて筋肉におけるブドウ糖や中性脂肪の利用および消費を高めることは大事な糖尿病治療となります。
私は個人的には時間と場所を選ばないレジスタンス運動を優先します。1~2分で行える運動を自分の身体と相談して行うことです。回数や時間帯は適宜自己判断でいいと思います。他人とは体質も環境もみんな異なります。他人と比較する必要はありません。あくまでもマイペースで行ってください。

註)この稿では軽症から中等度の糖尿病をHbA1c7.5までとしています。

中等度以上の糖尿病の方の一食中の炭水化物量についてはいろんな意見があり、主治医と相談しながら試行錯誤することをお勧めします。

患者さんの十分な理解の下に、治療し続けていても恒常的にHbA1cが8以下にならない症例については一度は大学病院クラスの専門家の教えを乞う様に心がけています。

ご理解頂きますように 
私の本稿で述べた事は糖尿病の方でも中等度までの方に対してが主です。われわれ開業医が速やかに対応出来なかった為にインスリン治療などで苦心されている大病院の先生方のご苦労に感謝しています。


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