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食後過血糖に直接影響するのは蛋白質や脂肪ではなく炭水化物です

1)食品中の炭水化物が血糖値に与える影響をブドウ糖と比較して表した指標がGI値です。

2)今から食べようとする食品中の炭水化物量をブドウ糖換算量g(wtGL値)へ置き換えてみる習慣をつけておくと糖尿病治療に大いに役立つこと請け合いです。wtGLg=食品中の炭水化物量g×その食品のGI値%

3)食後過血糖を防ぐには一食分の合計をブドウ糖換算量にして50g以下を目安にしてください。間食するときは25g以内を目安にしてください。ただしインスリン治療中の方でインスリン治療の減量や中止を望む方は一食分のブドウ糖換算量を25g以内にされる事を勧めます。

4)GI値はネットで調べると簡単に調べられます。ただし、報告者によって値が異なりますので注意して下さい。しかしその食品の大まかな傾向は解りますので参考になります。

5)GL値及びwtGL値については表を参考にして下さい。

6)三食は気を付けていても意外とコンビニのオヤツや飲料水などが血糖値を悪くしていることをよく経験します。注意して下さい。果物類は表でもお分かりのように量さえ極端でなければwtGL値も多くなく、食後過血糖の心配はいらないと思われます。

7)インスリン注射は自己インスリンとは異なります。インスリン注射は筋肉や脂肪細胞に働きかけ血糖をコントロールしていますが糖尿病のコントロールの中心的役割を果たす肝臓では作用していません。肝臓に於いてインスリンがグルカゴンとバランスを取り合って血糖コントロールをしているという側面があります。当然インスリン注射に頼りすぎるとこの両者のバランスが崩れてしまいます。インスリン注射は血糖コントロールがうまくいかない時の臨時の治療と考えます。

8)簡易レジスタンス運動を家庭や仕事場などの日常生活に取り入れる工夫が大事です。
タイミングとしては食後過血糖を抑え、自己インスリン分泌を改善させるるというイメージを持って毎食後すぐに数分行う事が大事です。

9)炭水化物含有量の多い食品はゆっくり摂取する習慣をつけることが大事です。血糖値の急激な変動(血糖値スパイクとも言われることもあります)は血管を傷つけやすい事が分かっています。

10)血糖値に与える影響と肥満に対する影響は必ずしも同じではありません。血糖値を意識するならwtGL値を、体重増加が気になるなら炭水化物や脂肪のカロリーを意識する必要があります。

11)ご飯やパンなどの炭水化物を単独で食べるよりも、牛乳、たまごや納豆、チーズ、ハムなど蛋白質や脂肪を一緒に取った方が摂取カロリーは増えますが、むしろ食後血糖値は下がる傾向があるようです。食物繊維も勿論いいです。

12)糖尿病の方で、現在のHbA1cを薬を増やすことなく1割減らしたい方への提案。例えば、7から6.3へしたい場合はいつもの食事中の炭水化物量のみ1割減らすことを勧めます。

13)境界型糖尿病の段階からすでに動脈硬化が始まっているという事実が河盛教授主導の内頸動脈エコーで見事に証明されています。糖尿病治療において早期の段階から食後過血糖を意識してその是正に勤める姿勢が開業医には必要です。そのことが、自己インスリン分泌作用を改善しHbA1Cの改善につながっていきます。

14)残念ながら早期でない糖尿病患者さんも多くいることも事実です。しかし糖尿病治療は流動的であることも知っておく必要があります。1型糖尿病でない限りは例えインスリン治療が長年に渡った患者さんでも、その減量や離脱は決して無理ではありません。私は個人的にはHbA1Cが8以上の膠着状態が続くと糖毒性と判断してインスリン治療に踏み切っていますが、最近では、早期に食後過血糖を是正し自己インスリン分泌能を改善する目的ならHbA1C7程度からでもインスリン治療の介入もありかと考え始めてます。そのことによってインスリン治療から脱却できる可能性がある高くなると考えるからです。

15)糖尿病を改善して大事な栄養素であり、美味しい炭水化物をしっかりと食べられる身体をめざしましょう。決して極端な糖質制限を強いることには反対します。私は炭水化物制限論者ではなく適正炭水化物論者です。


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